家族信託は、老親の認知症などで預貯金、不動産、株券などの資産が凍結され、節税対策や資産運用ができなくなるリスクを取り除き、老親(委託者)から資産を託された家族(受託者)が、老親の相続直前まで積極的な資産運用を継続できるしくみですが、契約期間中には、資産保有、資産承継にかかる税負担が生じることとなります。
課税のタイミング
家族信託実行中に税負担が生じるタイミングは、大きく分けて、契約開始時、契約期間中、契約終了時に分かれます。
ここからは、それぞれのタイミングで、具体的にどのような税負担が生じる、または生じる可能性があるのかを見ていきましょう。
契約開始時
契約開始時には、資産を託す委託者と利益を受け取る受益者が同一人物の場合、資産の移転は生じないものとして、贈与税は課税されません。
しかし、委託者本人の資産上の利益を受け取る受益者が本人以外の場合は、資産の移転があったものとして、贈与税の課税対象となります。
また、不動産を信託財産とした場合は、受託者名義への所有権移転登記時に、登録免許税(評価額の3%~4%)が課税されます。
契約期間中および信託終了時
契約期間中および信託終了時には、主として、次に掲げる税負担が生じる、または生じる可能性があります。
(1)信託財産に不動産がある場合、受託者に固定資産税(標準税率1.4%)と市街化区域内に不動産が所在する場合は、固定資産税に加えて、都市計画税(標準税率0.3%)が課税されます。
(2)1年を通じて、賃貸経営等による不動産収入が発生した場合は、受益者に対する所得税の課税対象となります。
(3)契約期間中に不動産を売却し、譲渡益が生じる場合は、受益者に対して譲渡所得税が課税されます。
(4)信託終了事由(委託者他界)により、帰属権利者に信託財産が承継された場合は、帰属権利者に対する相続税の課税対象となります。
(5)受益者変更事由(受益者他界)により、新受益者が信託財産を承継した場合は、新受益者に対する相続税の課税対象となります。
ここで紹介した税負担については、その殆どが家族信託の利用により新たに生じるものではなく、相続、贈与など財産の次世代への承継や売却などが原因で生じるものであることをご認識頂き、親の認知症対策の必要性や家族信託等による解決策の実施についてご検討頂ければと思います。