法定後見制度利用手続きと費用

成年後見制度は、判断能力の不十分な人が不利益を被らないように保護するための制度です。
この制度には、法定後見制度と任意後見制度の二種類があります。

法定後見制度は、本人の判断能力の低下、喪失後に、家庭裁判所(以下「家裁」という。)に選任の申立てを行い、家裁が後見人を選任します。
一方、任意後見制度は、本人が元気なうちに、本人と本人が希望する後見人予定者との間で、任意後見契約を公正証書で交わし、本人の判断能力の低下・喪失に備える制度です。
この二つの制度は、手続きやかかる費用が異なるので、今回は、法定後見制度の手続きの流れと費用について解説します。

法定後見制度の手続きの流れ

申立ては、本人(被後見人予定者)が居住する地域を管轄する家裁に、本人、配偶者、4親等以内の親族、身寄りがない場合は、市区町村長が行うことができます。
申立ての手続きは、以下のとおりとなります。
(ア)家裁から受領した申立て書類(後見開始申立書、申立事情説明書、医師の診断書)を作成する。
(イ)かかりつけ医の診断書を用意する。
(ウ)申立て書類が揃ったら、家裁に面談日の予約を入れる。
(エ)家裁に申立書と必要書類一式を提出する。(提出により審理開始となる。)
(オ)家裁職員が、申立人、後見人候補者と面談する。(必要に応じて本人との面談もあり。)
(カ)必要に応じて、家裁が親族に意向照会を行う。
(キ)必要に応じて、家裁が医師に被後見人予定者の判断能力鑑定を依頼。
(ク)家裁の審判、後見人の選任。
(ケ)後見人の登記
(コ)後見業務の開始。

法定後見制度の申立て手続き費用

申立手数料、後見登記手数料、診断書作成料、戸籍謄本・住民票・成年後見登記の不存在証明書取得、郵便切手代などは必ず必要な費用として、2万円程度が必要となります。
ここからは、以下のとおり、ケースに応じて費用が必要となります。
(ア)医師の鑑定費用 5~10万円程度
(イ)手続きを専門家に依頼する場合の報酬 10~30万円程度
(ウ)後見制度支援信託を利用する場合の専門職後見人報酬 20万円程度

法定後見制度利用時の留意点

申立てにかかる費用は、約2万円から60万円程度となり、自分自身で全ての手続きを行えば、制度利用にかかる費用を大幅に減らせますが、後見人に弁護士や司法書士などの専門家が選任された場合は、年間で24万円から72万円(2万円/月~6万円/月)の専門家への報酬が、本人が快復されるか、お亡くなりになるまで、継続的に必要となります。
また、後見制度は、本人の財産の維持保全を目的として、家庭裁判所の監督下で財産管理が行われるので、家族信託のように自由度の高い財産管理は期待できません。
ご家族に適した財産管理手法は、ご家族の状況や財産の保有状況等により異なるので、本人の判断能力に問題が生じる前に、一度専門家に相談されることをお勧めいたします。